【大阪発夜行フェリー2等船室】船旅で出会った人・ひとり旅のすすめ
昭和の懐かしい旅のひとつに、夜行フェリーの船旅 があります。
なかでも運賃が最も安い2等船室、いわゆる船底の旅です。
船底の客室でごろ寝をして朝を待ちます。
見知らぬどうしの乗客が、出会ったばかりで袖触れ合わせて(足なんかも触れ合って)夜を過ごす。
昭和の帰省のひとコマです。
今回は昭和50年代の 大阪発夜行フェリーの船旅で出会った人 のお話です。
垣根のないひとり旅
旅、好きですか。
最近、どこか行かれましたか。
私は旅が好きです。
とくにひとり旅が好きです。
ひとりだと、垣根がなくて好きに動けます。
周囲からも絡みやすいのかもしれません。
ひとり旅をしていると、よく声をかけられました。
「ました」というのは、「若いころは」というまくらことばが隠れているからです。
いま(50代)はひとり旅をしてもあまり声はかかりません(笑)
夜の盛り場を歩くと、年に1度くらい呼び込みのお兄さんからお誘いの声がかかるぐらいです。
そんなときは逆にこちらから道を聞いたりして、軽くことばを交わしてから気持ちよく(お互い)去ります。
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昭和の学生の帰省風景
この記事は20歳、大学2年の夏に帰省したときの話です。
昭和50年代です。
当時の学生は帰省するのに飛行機はもちろん、新幹線は避けていました。
運賃が高いからです。
下宿生はとくに、なるべく安い交通手段で移動するのが前提です。
下宿生だった私も新幹線ではなく、格安の夜行フェリーの中でも最も安い2等船室Bを利用して帰省していました。
懐かしの夜行フェリー2等船室(別名船底)
夜10時半に大阪の弁天ふ頭を出港する夜行フェリーは、翌朝早く故郷の港に着岸します。
船室はいろいろあって、中でも片道1700円の2等船室B(=船底)を選びます。
船底をごろ寝ができるようにしつらえた船室です。
船底の堅い床に、これまた堅いじゅうたんを敷いた広間といった感じです。
ざこ寝します。
となりにどんな人が乗って(寝て)来るかが、旅の大きなポイントになったりします。
夜行フェリー2等船室(船底)のようす
2等船室Bには寝床に仕切りがありません。
広い床の好きな場所に、おのおの陣取って寝るのです。
体が触れ合っても、陣地にきまりはないから相手次第では文句は言えません。
運賃をあと500円出せば、同じ船底でも2等船室Aに乗れます。
2等船室Aには乗客ごとに仕切りがあります。
たしかブランケットも付いていました。
もう1000円出せば、ベッド寝台で寝られます。
でも下宿生には無理です。
計5000円ほど出せば個室に泊まれます。
風呂もついていました。
下宿生には全然無理です。
船底へ
夜行フェリーの船底にある2等船室Bに行くには、乗船したら階段を下ります。
ひたすら下へと階段を下りて行きます。
船底ですから船の底まで下りるのです。
夜行フェリーは、乗船した瞬間からワイルドな油の臭いが漂っています。
階段を下りるにつれて油の臭いは強烈になっていきます。
2等船室Bに足を踏み入れたら、まるでそれがサービスでもあるかのように油の臭いがまとわりついてくるのです。
臭いは服や荷物にしっかり染みついてきます。
2等船室Bでは寝床を確保してあとは寝るだけ
ワイルドな寝床
階段を下りきると、エンジン音と油の臭いの中を小走りで2等船室Bに進みます。
音と臭いだけでなく、エンジンの振動が内臓に響きます。
2等船室Bは、たたみ10畳ほどの広さの床がいくつか広がるだけの船室です。
夜行フェリーの2等船室Bには、寝床の仕切りもブランケットも付いていません。
直方体の堅いビニール枕はセルフで置いてあります。
確保したスペースに荷物と枕を置いて、自分のサイト(陣地=寝床)が立ちあがるわけです。
横になると、エンジンの細かい振動が体を震わせます。
夜行フェリーの船旅の神髄が、この 油の臭いとエンジン音と振動 です。
あとは朝まで寝るだけです。
ワイルドな寝床にそぐわない女性が現る
昭和の学生が帰省するときの風物詩のひとつが、夜行フェリーの船旅です。
夜行フェリー船底の2等船室Bは、油の臭いとエンジン音と振動 がフルサービスで施されます。
そんなワイルドな空間に確保した寝床で、メガネをはずして横たわります。
私は強度の近視です。
メガネをはずしてぼんやりした視界の中に、若い女性が現れたのです。
強度の近視でも、女性か男性かぐらいはわかります。
目や鼻は全然わかりません。
「こんばんは、ここいいですか」
寝転がったままでは失礼だと思い、あわてて起き上がりました。
「こんばんは、どうぞ」
メガネをかけ直すのがカッコ悪くて、視界はぼやけたままです。
弾んだ会話
半身を起こした私のとなりに女性は腰を下ろしました。
私たちは少し離れて肩を並べるようにすわったのです。
声の落ち着きから、彼女は私より4つか5つ年上かなという感じです。
「大学生?」
「はい。夏休みで帰省します」
彼女は小学校の先生で、友だちの結婚式で大阪に行っていた、と話しました。
会ったばかりなのになぜか話は途絶えず、やがて消灯の時間になりました。
周囲のほとんどの乗客が寝静まっても、私たちは声をひそめて話しつづけました。
私の大学のこと、彼女の小学校のこと、仕事の話、流行りのフォークソングのこと、、、
さすがに学校の仕事の話になると、年齢差を感じました。
年齢差以上の壁というのでしょうか。
いま思うと、わずか4~5歳の差だけど、20歳にとって4~5歳は大きな差です。
社会人と学生という立場の違いも大きいのでしょう。
ちょっと距離を感じながら話していました。
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「あなた」と呼ばれて
夜行フェリーの2等船室で彼女と交わした会話の中で、40年近く過ぎた今でもはっきりと覚えているセリフがあります。
ひとつは
「あなたも教師になる?」
と聞かれたこと。
忘れない理由のひとつは、生まれて初めて女性に「あなた」と呼ばれたこと。
もうひとつは、私の将来に少しでも興味を持ってくれたと感じたから。
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あなたも来ない?
朝になっても私たちはまだ話していました。
周囲の乗客がむくむくと起き始め、外はすっかり明るくなっています。
さあ降りる準備を、というときに彼女が言いました。
「あしたの夜、友だちとお酒を飲むの。あなたも来ない?」
2度目の「あなた」と、お酒に誘われたこと。
40年近くたってもはっきりと覚えている、もうひとつのセリフです。
誘われて恥ずかしい思いで、私は尻込みしてしまいました。
結局、別れるまで私はメガネをはずしたままでした。
彼女がどんな顔だったのか最後までわからずじまいです。
そのせいなのか、40年たっても忘れられないでうじうじ思い出しているのかもしれません。
思い出してあれこれ浸るのも、ひとり旅のおすすめ理由なのでしょう。
本日は当ブログをお読みいただきまして、ありがとうございました。
あなたが思い出深いよい旅をされることを願っています。
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