しゃべりーなサイ

ひとり旅の話、昔のこと、最近のこと、たまには勉強の話も。

【ラオス旅行記】ビエンチャンのストリートチルドレンの聖なる合掌

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 【ラオス旅行記】ビエンチャンのストリートチルドレンの聖なる合掌

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メコン川

 

タイやラオスなど東南アジアの仏教国では、ワイ と呼ばれる合掌のあいさつを交わします。

 

手のひらの合わせ方や頭の下げ方は、相手次第で微妙な違いがあるようです。

 

今回の記事は、ラオスで出会った ストリートチルドレンの少女 が私に見せてくれた  特別で聖なるワイ  の話です。

 

  

 

以下、いつもの旅行記同様、常体でいきます。

ラオスに行ったいきさつ

27歳のときに長いひとり旅を始めた。

いわゆるバックパッカー旅。

 

最初は世界一周をめざして日本を出た。

 

とりあえず日本からタイのバンコクに飛ぶ。

その後はなりゆき、といったよくあるパターンだ。

  

旅の途中でラオスのビエンチャンを訪れた。

日本が平成になったばかりの頃で、ラオスは政情不安定で治安もいいとは言えなかった。

 

「屈強なお尻」は必須事項

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gisawaさんによる写真ACからの写真

 

タイのバンコクから夜行列車で10時間。

早朝にタイ北部のウドンタニという町に着く。

ここですでにお尻が痛い。

 

「ウドン、ウドン」と駅の構内で地元の人が叫んでいる。

「タニ」のところは省いて呼ぶようだ。

どこかの県人が喜びそうな名前だ。

 

ウドンタニ駅から小型トラックに乗って、メコン川をめざす。

メコン川を渡ればラオスだ。

 

ダットサンを改造した小型トラックの座席は、荷台の鉄板にビニルシートを被せただけの武骨なもので、激しい揺れのたびにお尻を竹刀でぶたれたように痛い。

 

舗装されていない赤土の道路は、クレーターのようにワイルドに穴があいている。

 

穴だらけの道路に、トラックは弾み続けた。

 

1度トラックの乗り換えがあった。

その後もまた堅い座席で穴ぼこだらけの道をゆく。

 

走るというより、「跳ねてる」の方がいいか。

 

お尻の筋肉をひたすら酷使して、ようやくメコン川に着く。

 

 

 

メコン川の友好橋を渡って

 

友好橋という名がついた橋を渡り、ビザを取るための必要書類に記入して人の列に並ぶ。

 

あまりの暑さに、肘からあごから汗が流れる。

そしてひたすら待つ。

 

ビザを取ったら入国審査に並び、ようやく晴れてラオス入国だ。

 

そこからまた小型トラックの乗り合いタクシーに揺られる。

 

ここでもトラックは「走る」なんて悠長なものではなく、「跳ね」たり「弾ん」だり「着地した」りしてビエンチャンをめざす。

 

ケツは無事なのか。

 

乗り合わせたラオスの人々は、大きく揺れながらみんなニコニコして、興味深そうに外国人の私を見ている。

ケツは痛くないのか。

 

私を見ているんだけど、控えめだ。

視線も態度もグイっとは来ない。 

こっちを見ながら、あっちが恥ずかしがっている。

 

遠いところよく来ましたね~、ちょっと見ていいですか、みたいな柔らかな視線だ。

 

東南アジアの旅が穏やかでいられるのは、気候的、体力的にキビしいことはあっても、人が遠慮がちで優しいからなのだろう。

 

ラオス・ビエンチャンのメコン川

 

ラオスの首都ビエンチャン。

乗り合いタクシーを降りて、一緒に揺れたラオスの人たちに手を振る。

 

乗り合いタクシーにはラオスの人が6人乗っていて、4人が腕時計をしていた。

で、4人とも腕時計の針が全然違う時刻を指していた。

 

時刻違うよ、と指摘するとニコニコ笑うだけで、誰も時計を合わせようとしない。

 

「これはラオタイ(ラオスのタイム)だ」とまたニコニコ笑っていた。

  

メコン川ほとりの屋台

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米あかりさんによる写真ACからの写真

メコン川ほとりの道端で、ヤモリの串焼きをニコニコとかじっている男性と目が合った。

 

話してみると、きれいな英語を話す地元の高校教師だった。

 

ラオスに入ると英語を話す人が急に増えた。

 

タイではなかなか英語を話す人には会わない(観光業を除いて)が、ラオスは乗り合いタクシーの乗客も英語を流ちょうに話した。

 

ラオス人のその高校教師と夕食を食べる約束をして、一旦ホテルに戻ってシャワーを浴びる。

 

 

ほら、そこ、おとつい爆破事件のあった、、

メコン川の土手にある屋台で、優しい顔の高校教師とビアラオで乾杯をした。

 

食事はラープにした。

ラープはハーブの効いたミンチ肉料理だ。

 

英語が流ちょうなのは、アメリカにいたことがあるかららしい。

日本人と話すのは初めてだと言った。

 

しばらくして声をひそめて彼が言う。

 

「ほら、そこの裸電球が揺れているところ」

 

神妙な顔で言う。

 

おとつい爆破テロがありました

 

その事件は、前日にバンコクのテレビニュースで見ていた。

 

予定していたラオス行きをどうしようかと迷ったのだ。

が、決行した。

 

ビエンチャンは一国の首都にしては、都会どころか「町」と呼ぶにも頼りない。

 

のどかな村だ。

 

そんな村でも爆破テロが起き、人が死ぬ。

1日たてば、また一見平穏な日常に戻る。

 

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takusanさんによる写真ACからの写真

ストリートチルドレン

 となりのテーブルの西洋人客が食事を終えて席を立った。

 

とたんに、土手の暗闇からいくつかの小さな影が飛び出してきた。

 

小さな影たちは、客が去ったテーブルに飛びつくように駆け込んできた。

 

客が残した食べ物を手でつかみ、口に押し込んでいる。

グラスの水を飲む。

 

裸電球に映し出された顔は10歳くらいの子どもだ。

皿を舐め、野菜をわしづかみにして口に入れる。

 

グラスに残ったビールまでも子ども達は飲み干した。

 

一連の光景が当たり前のように繰り広げられることに驚いた。

 

これも日常なのだ。

誰も止めもしない。

 

高校教師が肩をすくめて、悲しそうな顔を見せた。

 

 

 

ラープ

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あられんさんによる写真ACからの写真

小さな影

 高校教師に夕食をつき合ってくれた礼を言って、私は席を立った。

 

「もう行くのですか。料理が残っていますよ」

 

名残惜しそうな高校教師に手を振って、屋台のテントを出た。

 

再び土手から飛び出してきた影が、私が去ったテーブルに押し寄せる。

 

見ていられなくて、私は背を向けた。

 

ホテルに向かって、暗い夜道を歩く。

 

虫やトッケー(ヤモリ)の声が聞こえる。

 

私のあとをとりわけ小さな影がひとつ、ついて来るのに気がついた。

 

私がひとまたぎする水たまりを、小さな影は小さな歩幅で大きく迂回する。

 

暗闇の中で古いビアバーが開いていて、女性の姿が見えた。

バーといってもテントとカウンターだけ。

あいさつすると、英語が話せるようだ。

 

私がカウンターに座ると、後ろの小さな影も立ち止まった。

距離を置いて私を見ている。

 

歳は?

ビアバーの女性に事情を話して、小さな影を手招きしてもらった。

 

影はゆっくりと近づいてきた。

 

女の子だ。

もとは白だったろうTシャツは、赤茶色に変色して大きく破れ、肩がむき出しになっている。

細い裸足の足は泥まみれだ。

 

バーの女性に通訳を頼んだ。

 

「歳は?」

「6歳」

 

女の子はよく動く黒い瞳で女性と私を交互に見た。

 

もっとも聞きたかったことを聞いてみた。

 

「なんでついて来たの?」

 

「あなたは私たちのために、ラープをたくさん残してくれました

 

「・・・」

 

礼を言いたくてついて来ました

 

少女は胸の前で手を合わせると、頭を下げ、ひざをちょこんと折った。

 

ワイ。

 

「それできみはこんなに遠くまでついて来たの?」

 

少女はコクンとうなずいて、もう1度ワイをした。

そしてすぐに振り返って、もと来た道を戻って行く。

 

今度はこちらの番だ。

私は少女の頼りない後ろ姿を見つめながら、距離を置いてついて行った。

少女が「住まい」に無事帰るのを見届けよう。

 

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ラオスを旅してよかった

こういうときは礼を言う。

 

それをどうやって彼女は学んだのだろう。

 

親もいない。

学校も行かない。

でも、異国から来た見知らぬ人に、礼を言うためだけに遠くついて歩く。

 

メコン川ほとりの屋台の裸電球が見えたところで、私はホテルに引き返した。

 

ああ、そうだったのだ。

お尻を痛くしてまで遠く来たわけがわかった。

 

ラオスに来たのは彼女に会うためだったのだ。

 

すばらしい旅になった。

 

ラープはラオス語で「幸せ」という意味だと、あとになって知った。

 

少女は、あのストリートチルドレンたちは、彼らなりの幸せを見つけて生きていてくれるだろうか。

 

 

本日は当ブログをお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

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