人生初の一人旅は大学受験の上京だった【新幹線の密かな愉しみ】
うさぎの島から世界一周まで
一人旅が好きで、年に何度も出かけます。
４０歳をすぎてから好きになった京都は、季節が変わるたびに訪れます。
いつも同じかばんを肩にかけて家を出ます。
身につける服も、もう１０年ほど同じものを着て出発です。
旅に出られるなら、服も宿も頓着しません。
一人旅がとにかく好きなのです。
短い旅も長い旅も
長いものなら、２７歳のときに３年計画で世界一周をめざして日本を出ました。
一人旅をするために、せっかく入った会社を辞めたほどです。
５０歳すぎても、休日の朝突然に思いついてひとり出て行きます。
今では有名になってしまった瀬戸内海の島「うさぎの島」もそうやって出かけました。
しかも２回。
１回目は１泊２日。
２度目は日帰りです。朝思いついて、そのまま行っちゃいました。
原点は何なのか考えてみた
会社を辞めて旅に出る。
朝、寝ぼけた状態のまま思いついて、そのまま出ていく。
よわい５０歳が近くなって、わが子でさえ「うさぎ」を見ることに興味がなくなった年齢だというのに、ひとりで３時間かけて「うさぎ」と遊ぶために車を走らせる。
船に乗って島についた瞬間に飛び込んできたうさぎの群れに、感激の涙を浮かべる（泣いてないけど）。
先月行ったばかりなのに、今月も来月も同じバスに乗って京都に行く。
車窓から鴨川が見えたとたんに、日ごろの煩いを忘れ「ああ、来てよかった」と目をうるませる（いや、うるんでません）。
この異常とも言える旅好きの原因は何だろう。
考えてみると、記憶は４０年前にさかのぼっていました。
人生初のひとり旅は大学受験で行った東京だった
なんで一人旅をやめられないんだろう（やめる気ないけど）。
考えた結果、、、「ああなるほど」。
わかったことがあります。
私の「はじめての一人旅」は大学受験の上京でした。
原点は高校３年生だったのです。
そこでよっぽどのいいことがあったのでしょう。
東京の大学を受けるために、何度か実家と東京を往復しました。
在来線から船に乗り換えて、新幹線を使っても８時間かかります。
使う船しだいでは１１時間かかります。
新幹線を使わなければ、たどり着けないことはありませんが、早朝出ても到着は翌日です。
飛行機を使うなんてことは、決してお金持ちではない田舎のふつうの家庭の受験生には月旅行でした。
大学入試に今のような指定校推薦も地方試験場もない時代です。
子どもの数が多かったので、大学側が強気な風潮でした。
大学を受けるためには、どんなに離れていてもその大学まで行って入試を受ける。
当然のこと、シーズンにはあらゆる乗り物が受験生で混んでいました。
夢の新幹線の旅
夜行寝台さんによる写真ACからの写真
私立大学をいくつか受けるためには、日程が２週間ぐらいにわたります。
その間、試験日が連続する場合は安い宿に泊まります。
試験日の間隔が３日あくなら、宿泊費や食費と交通費の兼ね合いで一旦家に帰っていました。
夢の新幹線で往復するわけです。
懐かしのゼロ系です。
もちろん、地元が近づくにつれ船にも在来線にも乗ります。
そのたびに荷物を抱えて、スペース確保のためにダッシュで飛び込みます。
新幹線で愉しみを見つける
新幹線を何度か利用するうちに、ひとつ愉しみを発見しました。
新幹線の車内販売のババロアが、涙が出るほど美味しかったのです（涙出てません）。
クリスマスイブの日にまだ固いアイスケーキを食べていた時代です。
生クリームなんて食べたこともありません。
初めて聞く車内販売の女の人の「ババロアいかがでしょうか」という呼びかけに反応してしまいました。
「ババロア」という、聞いたことないマヌケな名前になぜか好奇心が食いついてしまったのです。
英語はわりと勉強したはずなのに、まったく知らないカタカナ語。
呼びかける声が気になってしかたありません。
車内販売のワゴン車は、はじっこの車両まで行くとＵターンして戻ってきます。
１０分か２０分待っていれば、同じワゴン車が現れるのです。
ババロアの誘惑
車内販売のワゴン車が行って帰ってくる。
その間に、買おうか買うまいか思い悩むわけです。
こういうときは２つの自分殺しの文句を駆使しました。
「これが最初で最後だから」
「何事も経験だから」
これをしっかり自分に言い聞かせて、ワゴン車の再登場を待ちます。
戻ってきました。
「ババロアいかがでしょうか」
声はピンク色の響きです。
意を決して呼び止めます。
初めてのババロア
ワゴン車が目の前までやって来ました。
値段を聞かなきゃ。
「ババロア、いくらですか」のはずが、地方人間です。標準語が使えません。
「なんぼですか」と聞いていました。
今なら恥ずかしいですが、当の本人は平気です。
「なんぼ」を標準語だと思っていますから。
それどころか
「いくら？⤴」と関東の人が言うときのように
「なんぼ？⤴」と語尾を上げて言ってのけたのです。
英語の勉強みたいになってきました。軌道修正します。
ババロアは２００円ぐらいだったと記憶しています。
受験生の２００円は安くはありません。
めったに買えないはずだから、心して食します。
揺れる新幹線車内で、ひとかけらも取りこぼさないように、１８歳（になったばかり）の命をかけて口に運びました。
入試のことなど忘れています。
「旅に出ると日々の煩いから解放される」をここで体感したのです。
ババロアの味は、その後新幹線に乗るたびにワゴン車を呼び止めた事実からもおわかりとだ思います。
そんなことがあって、一人で旅に出る愉しみを１８歳で身につけてしまったのでした。
人生初の一人旅で味わった甘い思い出を再現したくて、その後の人生を通して旅に出続けているのです。
あなたも積極的に旅に出て、豊かな人生を送ってくださいね。
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