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大学1年の梅雨の日に傘がなくて途方に暮れた話【雨の日の思い出】

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大学1年の梅雨の日に傘がなくて途方に暮れた話【雨の日の思い出】

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居場所のない生活

雨の日にまつわる思い出を書いてみます。

40年前のできごとです。

 

大学に入ってひとり暮らしを始めたばかりでした。

 

正確にはひとり暮らしではなく、民家の2階に居候です。

居候とは、ひとり暮らし以上に独りを感じます。

 

1階に大家の家族が住んでいました。

朝晩のご飯がついて、ひと月35000円だったと記憶しています。

 

 

大家の家族には中学生と高校生子どもがいて、キャンキャンとうるさく鳴くマルチーズを飼っていました。

 

2階にはもうひとり下宿生がいました。

3つ年上の大学生で、下宿して4年めになります。

 

彼は大家の家族にすっかり打ち解けて、マルチーズを囲んでまるで本当に家族の一員のように仲良くしていました。

 

本当の孤独

 

地方から出てきたばかりの私は、大家の家族と先輩下宿生の輪の中に入っていけず、居場所のない思いをしていました。

 

それまで感じたことのなかった「孤独」を、このとき初めて味わったのです。

 

孤独というものは、ひとりだから感じるものではなくて、周囲に人がいるのに誰も自分と交わらない状態をいうのだと知りました。

 

私の田舎とは違い、下宿を一歩出ると常に人が歩いています。

 

電車はいつも人で混んでいます。

 

でも自分のことを知っている人はいなくて、こちらを見る人も話しかけてくる人もいません。

 

下宿先でも人はいるけど、自分の居場所がない。

 

孤独でした。

 

それが当たり前のように毎日を送っていました。

 

 

 

下宿先も大学も

電車の乗り換えを覚え、地下鉄駅までの通路も間違わずに歩けるようになったころに梅雨入りしました。

 

そもそも性格的に学校でハジけているわけでもなく、友だちがバンバンできたわけでもありません。

 

近くに住む同郷の同級生と会うのが唯一の楽しみでした。

 

そんなある日。

 

大学の授業を終え、電車を乗り継いで下宿先の最寄り駅に着いたときにはすっかり暗くなっていました。

 

運の悪いことに、大粒の強い雨が降っています。

傘は持っていません。

下宿までは歩いて10分。

 

雨がやむのを待つか、走って帰るか。

ビミョーな距離です。

 

駅の出口に立って迷いました。

誰も来るわけないのに、駅舎から身を乗り出して外を伺います。

 

ひさしから雨だれが落ちてきて体を濡らしました。

 

同じ電車を降りた乗客の中にも、傘を持たない人がたくさんいます。

公衆電話に走る人。呆然と立つ人。

 

私と似た大学生もいます。

でも自宅生のようです。

やがて家族が迎えに来て、大学生がほっとした顔で帰って行きます。

 

 

 さ、行こう

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Photo by Craig Whitehead on Unsplash

 

駅舎の軒先でようすを伺っていると、並んで待っていた乗客たちが迎えの家族とともに帰って行きます。

 

こんなとき、また孤独を感じて寂寥感に襲われます。

自分には連絡する相手もいません。

 

雨だれが顔を濡らしました。

もう走るしかない。

 

そのとき、雨だれがすっと途切れたのです。

 

「え?」

 

見上げると、黒い大きな傘が頭の上にありました。

 

さ、行こう

 

スーツ姿の男性が表情を変えずに私に言いました。

 

傘を差しかけられている、という状況が理解できました。

このときの安心感ったらありません。

 

「どっち?」

 

自分の父親ぐらいの年齢の男性は、やはり表情を変えずに問いかけてきました。

 

「すみません、こっちです」

 

下宿先は駅の前の道を右に行きます。

 

ほんの数分間、男性と無言で歩きました。

互いに傘から出た半身が濡れています。

 

男性の背広の肩が濡れていくのを気にしながら歩きました。

 

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もう大丈夫だ

 

男性と歩くその道から右に降りる階段が伸びています。

 

「ぼく、こっちですから」

 

私は幸福感に満たされながら、もう大丈夫だ、希望に満ちた気持ちで傘から離れました。

 

「そう? 気をつけて」

 

男性はそれだけ言って見送ってくれました。

 

「ありがとうございました」

 

思い切り頭を下げて礼を言うと、私は階段を走って下りました。

 

大丈夫だ、と思ったのは雨のことというより、これまでいいことのなかった大学生活が好転するような気がしたのです。

 

たった 数分間のこの出来事のおかげで 、です。

 

 

 こんな大人になりたい

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Photo by freestocks on Unsplash

地方から出てきて、ひとり暮らし以上に孤独だった、大学1年生の梅雨の日の出来事でした。

 

たった数分間の出来事。

40年たっても細かく覚えているのは、不安で孤独な中で親切にされたということだけではありません。

 

 

男性が余計なことを何も聞きも話しもしなかったこと。

傘を差しだすことは、大人にとっては何でもないことなのかもしれません。

しかし、私にはとてつもなくうれしく心強い味方でした。

 

もうひとつ。

階段を走って下りる私の背中を男性は見送ってくれました。

まるで私の大学生活そのものをずっと見守るかのような温かい目でした。

 

ヘタはできないな、と。

 

そして、自分もこんな大人になろう。

そう言い聞かせてきました。

 

差し出された傘が、当時の境遇の私にはそれほどうれしかったということです。

 

傘がなくて途方に暮れたおかげで、予期せぬいい経験ができました。

 

あなたにも雨にまつわる思い出がありますか。

 

本日は当ブログをお読みいただきまして、ありがとうございました。

 

その後の大学生活はこんな感じでした ↓ ↓ ↓  

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